集団規定の適用エリアと「条例による制限の付加」
自分の土地だからといって、敷地いっぱいに巨大なビルを建てたり、細い路地の奥に高層マンションを建てたりしたら、街全体の環境が壊れてしまいます。「周りの環境(街全体)とのバランスをとるためのルール」を集団規定と呼びます。
【重要】集団規定が適用されるエリア
単体規定が「日本全国どこでも」適用されるのに対し、集団規定は原則として「都市計画区域」および「準都市計画区域」の中でのみ適用されます。
地方公共団体の「条例」による制限の付加(法40条)
建築基準法はあくまで「国が定めた最低基準」です。そのため、雪国や台風が多い地域など、地方ごとの事情に合わせてルールを厳しくすることが認められています。
条例で「制限を付加(厳しく)」できる!
地方公共団体は、その地方の気候・風土の特殊性などを考慮して、必要があれば条例で、建築物の敷地、構造、建築設備に関する制限を「付加(=より厳しく)」することができます。(※「緩和(緩く)」することは原則できません)
道路と敷地のルール(接道義務とセットバック)
火事や地震が起きたとき、消防車や救急車が建物の前まで入れないと困ります。そのため、建物を建てる敷地は「道路」にしっかり接していなければなりません。
接道義務の基本原則
(※自動車専用道路などは、この「道路」には含まれません。出入りできないからです)
細い道の救済措置:「セットバック(2項道路)」
昔からある細い道(幅4m未満)沿いに建っている家を建て替える場合、「4mないから建て替え禁止!」としてしまうと可哀想です。
セットバックの仕組み
道路の中心線から2m下がった(後退した)線を、道路の境界線とみなします。これにより、将来的にすべての道路の幅を4mに広げていくことを目指します。
面積計算の超頻出トラップ
この下がった(セットバックした)部分は「道路」とみなされるため、建蔽率や容積率を計算する際の「敷地面積」に算入することはできません。自分の土地であっても面積から除外されます。
どんな建物を建てる?(用途制限の詳細)
「13種類の用途地域」ごとに、「建てて良い建物・悪い建物」が細かく設定されています。
- 住宅・共同住宅・老人ホーム: 「工業専用地域」以外ならどこでも建てられる!
(※工業専用地域には、人間が寝泊まりする施設は一切建てられません) - 学校・病院: 「工業地域」と「工業専用地域」では建てられない!
(※準工業地域なら、住宅も学校も病院も建てられます) - カラオケボックス・パチンコ店: 「第一種住居地域」まではダメ。「第二種住居地域」から建てられる!
- 店舗(日用品等): 第一種低層住居専用地域では原則ダメですが、小規模(150㎡以内)のものは第二種低層住居専用地域から建てられます。
※用途制限の詳細は当ページのPDF資料「用途制限 横断整理表」をご活用ください。○×で視覚的に覚えられます。
低層住居・田園住居地域の「特有ルール」
閑静な住宅街を守るための「第一種・第二種低層住居専用地域」と「田園住居地域」には、他の用途地域にはない3つの厳しい特有ルールが課せられます。ここからの出題は非常に多いです。
建物の高さを原則として 10m または 12m のうち、都市計画で定められた限度以下にしなければなりません。
都市計画で定められた場合、建物の外壁を敷地境界線から 1m または 1.5m 以上離して(後退させて)建てなければなりません。(隣の家との隙間を確保するため)
細切れの「ミニ開発」を防ぐため、都市計画で敷地面積の最低限度を定めることができます。ただし、その限度は 200㎡以下 でなければなりません。
建蔽率・容積率の計算とボーナス
建蔽率(けんぺいりつ)の緩和ボーナス
建蔽率(敷地面積に対する建築面積の割合)には、特定の条件を満たすと「+10%(1/10)」のおまけがもらえるルールがあります。
防火による緩和(+10%)
・防火地域内にある耐火建築物等・準防火地域内にある耐火・準耐火建築物等
角地による緩和(+10%)
特定行政庁が指定する角地(2つの道路が交わる角の土地など)。最強のボーナス:建蔽率の制限なし(100%OK)
指定建蔽率が「8/10(80%)」とされている地域(商業地域など)で、上記の「防火による緩和(+10%)」の要件を満たした場合、建蔽率の制限がなくなり敷地いっぱいに建てられます(100%)。
容積率(ようせきりつ)の計算手順
容積率(敷地面積に対する延べ面積の割合)の問題は、必ず「指定容積率」と「前面道路による容積率」の2つを比較して、厳しい方(小さい方)を採用します。
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指定容積率をチェック
都市計画で定められた容積率(例:300%、400%など)。 -
前面道路の幅をチェック(※12m未満の場合のみ計算)
前面道路の幅員が12m未満の場合、道路幅に応じた計算をします。
・住居系の用途地域: 前面道路の幅員(m) × 0.4(4/10)※前面道路が複数ある場合は「最も広い道路」の幅で計算します。
・その他の用途地域: 前面道路の幅員(m) × 0.6(6/10) - 1と2を比べて「小さい方(厳しい方)」が正解!
高さ制限(4つの斜線・絶対高さ)と日影規制
建物の高さを制限するルールです。「どの制限が、どの区域に適用されるか」が問われます。
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絶対高さ制限(10m または 12m)【適用区域】 第一種・第二種低層、田園住居地域のみ。
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道路斜線制限【適用区域】 すべての用途地域(用途地域外も含む)に適用されます。
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隣地斜線制限【適用区域】 第一種・第二種低層、田園住居地域を「除く」地域。
※低層住居エリアには「絶対高さ制限(10m/12m)」がすであるため不要です。 -
北側斜線制限【適用区域】 第一種・第二種低層、田園住居地域、および第一種・第二種中高層(※日影規制の対象区域を除く)。
北側の隣人の日当たりを守るため、北側を斜めに削るルールです。
日影規制(日影による中高層建築物の高さの制限)
冬至の日に、一定時間以上「隣の土地に日陰を作らない」ように高さを制限するルールです。
商業地域、工業地域、工業専用地域
※仕事や商売の効率を優先するエリアだからです。「商業地域にも適用される」という引っかけが頻出します。
防火地域・準防火地域の詳細ルール
駅前や繁華街など、火災の被害が大きくなりやすい場所に指定されます。「階数」と「面積」によって、建てなければならない建物の構造(耐火・準耐火)が変わります。
- 階数が 3 以上
または 延べ面積が 100㎡ 超
必ず「耐火建築物等」にしなければならない! - 上記以外(階数2以下かつ100㎡以下)
「耐火」または「準耐火」にしなければならない。
- 階数が 4 以上
または 延べ面積が 1,500㎡ 超
「耐火建築物等」 - 延べ面積 500㎡超〜1,500㎡以下
「耐火」または「準耐火」
敷地が「複数」の地域にまたがる場合の処理
1つの敷地が「商業地域」と「住居地域」にまたがっている場合など、ルールの性質によって処理の仕方が変わります。非常によく出題されます。
| 制限の種類 | またがった場合のルール(適用方法) |
|---|---|
| 用途制限 (どんな建物が建てられるか) |
敷地の過半(面積の大きい方)の属する地域のルールを、敷地全体に適用する。 |
| 建蔽率・容積率 (計算問題) |
それぞれの地域の面積の割合に応じて加重平均(面積按分)して計算する。(※過半ではない!) |
| 防火・準防火地域 (構造の制限) |
原則として、建物全体に厳しい方の地域のルールを適用する。 (※例外:境界に「防火壁」を設けた場合は、防火壁の外側は緩い方のルールを適用できる) |
確認テスト(5問)
選択肢をクリックすると正解と解説が表示されます。集団規定のひっかけポイントをテストしましょう。
問題 1
地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性を考慮して必要があると認める場合においても、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関する制限を付加することはできない。
問題 2
第一種低層住居専用地域内においては、都市計画において、建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離の限度を1.5m又は1mと定めることができる。
問題 3
北側斜線制限は、第一種・第二種低層住居専用地域及び田園住居地域においては適用されるが、第一種・第二種中高層住居専用地域においては適用されない。
問題 4
建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合、原則として、その敷地の過半の属する地域の防火規定が当該建築物全体に適用される。
問題 5
建蔽率の限度が8/10とされている地域内で、かつ、防火地域内にある耐火建築物については、建蔽率の制限は適用されない。
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建蔽率・容積率 解法フロー
計算問題の手順をステップ化。角地緩和や前面道路の乗数も図解で迷いません。
用途制限 横断整理表
13用途地域×主な建築物の○×マトリクス。学校、病院などの頻出を網羅。
高さ・日影規制 比較表
絶対高さや4つの斜線制限「どの区域に適用されるか」の境界線を整理。
防火・準防火地域 比較表
階数や面積による耐火要件の違い、またがる場合の例外処理を図表で完全網羅。