報酬の制限

2026年(令和8年)10月本試験対応

速算法・居住用の0.5ヶ月ルール・低廉な空家等の特例──「計算パターン」を制する者が本試験を制す!

1報酬の基本ルール

宅建業者が受け取れる報酬(仲介手数料)の額は、国土交通大臣が定める上限額を超えてはならないと宅建業法第46条で規定されています。これはお客さんが法外な手数料を請求されることを防ぐためのルールです。

報酬の原則(宅建業法 第46条)
  • 報酬の額は「国土交通大臣の定めるところ」による(告示で上限が決まっている)。
  • 宅建業者は、定められた上限を超えて報酬を受け取ってはならない。違反した場合は業務停止処分や罰金の対象となる。
  • 宅建業者は、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に報酬額を掲示しなければならない。
  • 上限額は「もらえる最大額」であり、実際の報酬は上限以下で依頼者との合意によって決まる。
学習のコツ
【学習のコツ】報酬計算は「パターン分け」で攻略する

報酬の計算は「売買か賃貸か」「媒介か代理か」「居住用か事業用か」「業者が1社か複数社か」でパターンが変わります。まずは基本の計算式を覚え、次にパターンごとの上限ルールを整理するのが効率的です。特に消費税の扱い(税抜き価格で計算→最後に×1.1)を忘れないようにしましょう。

注意ポイント
【注意ポイント】「報酬」に含まれないもの

原則として、広告費や調査費などは報酬に含まれており、別途請求することはできません。ただし「依頼者の特別の依頼に基づく広告」の実費と、「遠隔地の物件調査の出張旅費」の実費に限り、報酬とは別に受け取ることが認められています。「依頼者の特別の依頼」がなければ、どんなに費用がかかっても別途請求は不可です。

2売買・交換の媒介報酬の計算

宅建業者が売買や交換の「媒介(仲介)」をした場合に、依頼者の一方から受け取れる報酬の上限額は、物件価格に応じて決まります。

① 報酬の計算方法(速算法)

正式には価格帯ごとに分けて計算しますが、宅建試験では「速算法」を使えば一発で求められます。計算の基準となる「物件価格」は、消費税を含まない金額(税抜価格)です。

物件価格(税抜) 速算法の計算式(税抜) 税込での上限額
200万円以下 物件価格 × 5% 左記 × 1.1
200万円超~400万円以下 物件価格 × 4% + 2万円 左記 × 1.1
400万円超 物件価格 × 3% + 6万円 左記 × 1.1

◁ 横スライド ▷

計算例:3,000万円の土地の媒介

400万円超なので速算法を適用します。

税抜報酬:3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円

税込報酬:96万円 × 1.1 = 105万6,000円(依頼者の一方から受け取れる上限額)

重要ポイント
【重要ポイント】媒介で複数の業者が関与する場合

売主側に業者A、買主側に業者Bがそれぞれ媒介として関与する場合、Aは売主から、Bは買主からそれぞれ上記の上限額まで報酬を受け取ることができます。つまり、業者が複数いる場合でも、1人の依頼者が支払う報酬は変わりません

② 交換の場合の計算方法

交換の場合は、交換する物件の価格が異なるときは高い方の価格を基準にして報酬を計算します。たとえば2,000万円の土地と3,000万円の建物を交換する場合、高い方の3,000万円を使って速算法で計算します。

3売買・交換の代理報酬の計算

「代理」とは、業者が依頼者に代わって契約を締結する形態です。媒介より責任が重いため、受け取れる報酬の上限も異なります。

代理の報酬上限ルール
依頼者の一方から

媒介の計算額の

2倍まで
ただし!

相手方からも報酬を受ける場合は
両者の合計額

媒介の計算額の2倍以内
計算例:2,000万円のマンションの代理

媒介の上限(税抜):2,000万円 × 3% + 6万円 = 66万円

代理の上限(税抜):66万円 × 2 = 132万円

税込上限:132万円 × 1.1 = 145万2,000円

※ただし、相手方(買主)からも報酬を受ける場合は、合計で145万2,000円を超えてはならない。

注意ポイント
【注意ポイント】代理と媒介の「合計上限」の引っかけ

よくある出題パターンとして、「売主の代理をした業者Aが売主から報酬を受け取り、さらに買主の媒介をした業者Bも報酬を受け取る」ケースがあります。この場合、A・Bが受け取る報酬の合計額も、媒介の計算額の2倍を超えてはなりません。業者が別でも「合計額の上限」が適用される点を見落とさないようにしましょう。

4賃貸借の媒介・代理の報酬

賃貸借(物件を貸す・借りる取引)の報酬は、売買とは計算方法がまったく異なります。「居住用建物」かどうかで特別ルールがある点が最大のポイントです。

① 賃貸借の媒介報酬

賃貸借の媒介報酬ルール(原則)
宅地・事業用建物

依頼者の双方から受ける
合計額

借賃1ヶ月分 × 1.1
(税込)以内

※一方からの受領額の制限なし(合計が上限内ならOK)

居住用建物【特別ルール】

依頼者の一方から受ける額は

借賃の0.55ヶ月分
(税込)以内が原則

依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得ていれば、一方から1.1ヶ月分まで可(ただし双方合計は1.1ヶ月分以内)

注意ポイント
【注意ポイント】承諾のタイミングが超重要

居住用建物の賃貸借で、一方から0.55ヶ月分を超える報酬を受け取るための承諾は、「媒介の依頼を受けるに当たって」得る必要があります。つまり事前(依頼の引受け時点)の承諾が必要であり、契約手続きが進んでからの事後的な承諾では無効となります。試験では「契約締結時に承諾を得た」と書かれていたら×です。

重要ポイント
【重要ポイント】複数業者が関与する場合の合計制限

貸主側に業者A、借主側に業者Bが介在する場合でも、A・Bが受け取る報酬の合計額は「借賃1ヶ月分 × 1.1(税込)」以内です。売買の場合と異なり、業者ごとに1ヶ月分ずつもらえるわけではありません。

② 賃貸借の代理報酬

代理の場合の報酬上限(依頼者の双方からの合計額)は

借賃1ヶ月分 × 1.1(税込)以内

※代理でも媒介と同じ「1ヶ月分」が上限です。売買の代理のように「媒介の2倍」にはなりません。相手方からも報酬を受ける場合は、合計で借賃1ヶ月分 × 1.1以内に収める必要があります。

③ 権利金がある場合の特例(事業用のみ)

居住用以外の建物(店舗・事務所など事業用)の賃貸借で、権利金(返還されない金銭)が授受される場合は、その権利金を「売買代金」とみなして報酬を計算することができます。

計算例:事業用ビルの賃貸借(月額賃料30万円、権利金500万円)

① 通常の計算:借賃1ヶ月分 × 1.1 = 33万円(税込)

② 権利金を売買代金とみなした計算:500万円 × 3% + 6万円 = 21万円(税抜)→ 21万円 × 1.1 = 23万1,000円(税込)…一方分

 → 媒介なら双方合計で46万2,000円(税込)まで可能

①と②を比較し、高い方を選択可能 → ②の方が高いので、46万2,000円が上限。

注意ポイント
【注意ポイント】居住用建物では権利金の特例は使えない

権利金を売買代金とみなして計算できるのは、居住用以外(事業用)の建物のみです。居住用建物の場合は権利金がいくらあっても、報酬は「借賃1ヶ月分 × 1.1以内」から動きません。試験では「居住用建物で権利金300万円がある場合…」という引っかけが出ます。

5低廉な空家等の特例【2024年改正】

空き家問題の解消を促進するため、価格が低い物件の取引でも業者がビジネスとして成り立つよう、報酬の上限を引き上げる特例が設けられています。2024年7月1日施行の改正で大幅に拡充されました。

低廉な空家等の特例(改正後)
項目 改正前(2018年〜) 改正後(2024年7月〜)
対象物件 400万円以下 800万円以下
報酬の上限(税抜) 18万円 30万円
報酬の上限(税込) 19万8,000円 33万円
特例適用の相手方 売主のみ 売主・買主の双方
「現地調査等の費用を要する」要件 必要 不要(削除)

◁ 横スライド ▷

【重要ポイント】改正後の計算ルール
  • 対象:物件価格(税抜)が800万円以下の宅地・建物(使用の状態は問わない=空き家でなくても対象)
  • 上限:媒介の場合、依頼者の一方から受け取れる報酬は30万円 × 1.1 = 33万円(税込)が上限
  • 双方から:改正後は売主からも買主からもそれぞれ最大33万円まで受け取れる(合計最大66万円)
  • 代理の場合:依頼者から受け取れる上限は媒介の特例で算出した額の2倍以内。相手方からも報酬を受ける場合はその合計が2倍以内。
計算例:300万円の空き家の媒介

通常の計算:300万円 × 4% + 2万円 = 14万円(税抜)→ 15万4,000円(税込)

特例の上限:30万円 × 1.1 = 33万円(税込)

→ 特例により、通常計算の15万4,000円を超えて、売主・買主それぞれから最大33万円まで受領可能。

注意ポイント
【注意ポイント】特例の適用には事前の説明と合意が必須

低廉な空家等の特例を適用するには、媒介(代理)契約の締結に際して、あらかじめ上限の範囲内で報酬額について依頼者に説明し、合意を得ることが必要です。合意なく特例の上限額を一方的に請求することはできません。また、合意内容は媒介契約書(34条書面)に明記する必要があります。

6長期の空家等の賃貸借の特例【新設】

2024年7月の改正で、売買だけでなく賃貸借についても空き家対策の特例が新たに設けられました。

長期の空家等の賃貸借の媒介報酬特例

【対象物件】 長期の空家等とは?

  • 少なくとも1年を超える期間にわたり居住者が不在の戸建空き家・分譲マンション空き室
  • 相続等により利用されなくなった直後で、今後も利用の見込みがない戸建空き家・分譲マンション空き室

【報酬の上限】

依頼者の双方から受ける報酬の合計額

借賃1ヶ月分 × 2.2(税込)以内

【重要な制限】 増額できるのは貸主からの報酬のみ!

  • 借主から受ける報酬は通常どおり(借賃1ヶ月分 × 1.1以内。居住用は承諾なしなら0.55倍以内)
  • 増額分は貸主(大家)から受け取る形となる
計算例:家賃月5万円の長期空き家(居住用)の媒介

通常の合計上限:5万円 × 1.1 = 5万5,000円(税込)

特例の合計上限:5万円 × 2.2 = 11万円(税込)

借主から:最大 5万円 × 0.55 = 2万7,500円(承諾なしの場合)

貸主から:11万円 − 2万7,500円 = 最大 8万2,500円

注意ポイント
【注意ポイント】「低廉な空家等の特例」との違いを混同しない

「低廉な空家等の特例」は売買・交換に関するもので、対象は800万円以下の物件です。一方「長期の空家等の特例」は賃貸借に関するもので、対象は1年超の空き家等です。名前が似ていますが、取引の種類(売買 vs 賃貸借)と要件がまったく異なります。試験では両者を意図的に入れ替えた問題が出る可能性があります。

7報酬に関するその他のルール

報酬の計算式以外にも、試験で出題される重要なルールがいくつかあります。

① 消費税の取扱い

  • 計算の基礎となる「物件価格」や「借賃」は、消費税を含まない金額(税抜価格)を使用します。土地は非課税なのでそのまま、建物は税抜に直して計算。
  • 課税事業者の場合、計算した報酬額に消費税10%を加算します(×1.1)。
  • 免税事業者(課税売上1,000万円以下など)の場合は、「仕入れに係る消費税の円滑な転嫁」として従来は×1.04(みなし仕入れ率相当)が認められていましたが、インボイス制度導入後の取扱いに注意が必要です。

② 報酬額の掲示義務

宅建業者は、事務所ごとに公衆の見やすい場所に国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければなりません(法46条4項)。これは従業員名簿・帳簿・業者票の掲示義務と並ぶ「事務所の義務」の一つで、すべての事務所(本店・支店)に必要です。案内所等には不要です。

【重要ポイント】報酬についての禁止事項まとめ
  • 上限超過の受領禁止:国土交通大臣の定める額を超えて報酬を受領してはならない。違反すると1年以下の懲役・100万円以下の罰金等。
  • 不当に高額な報酬の要求禁止:たとえ実際に受領しなくても、不当に高額な報酬を「要求」しただけで業務停止処分の対象(法47条2号)。
  • 別途費用の原則禁止:依頼者の特別の依頼による広告費や遠隔地の調査旅費の実費を除き、報酬以外の金銭を受領することは認められない。
学習のコツ
【学習のコツ】報酬の出題パターンを「3ステップ」で攻略

報酬問題はステップ①「取引の種類を確認」(売買/賃貸、媒介/代理)→ ステップ②「基本の上限を計算」(速算法 or 借賃1ヶ月分)→ ステップ③「特例の有無を確認」(低廉な空家等・権利金・居住用建物の0.5ヶ月ルール)の順に解くのがコツです。また、問題文にある「消費税課税事業者」の記載を見落とさず、最後に×1.1を忘れないようにしましょう。

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