抵当権

2026年(令和8年)10月本試験対応

法定地上権から根抵当権まで!複雑なルールを図解でスッキリ整理し、本試験の得点源に変える!

1そもそも「抵当権」って何?

金融機関で住宅ローンを組んで念願のマイホームを購入する際、銀行は貸したお金を確実に回収するための「担保」を求めます。万が一ローンが返済できなくなったときに備え、その購入する不動産に対して設定される担保物権が抵当権(ていとうけん)です。

学習のコツ
【学習のコツ】占有を移さないのが最大の特徴

質屋さんに時計を預ける(質権)のとは異なり、抵当権は「お金を借りた人(設定者)が、そのままその家に住み続ける(占有を移転しない)」のが最大の特徴です。そのため、債務者は今まで通り不動産を利用・収益しながら借金を返すことができ、現代の経済社会において非常に使い勝手の良い担保として広く利用されています。

無事にローンを全額返済すれば、抵当権の抹消登記を行うことで、完全に担保の縛りから解放されます。

抵当権の基本構造
銀行 (抵当権者) お金を貸す 万が一の担保(抵当権) Aさん (設定者) 住み続けられる!

2抵当権の基本ルール(4つの性質+順位)

抵当権には、他の担保物権(留置権や質権など)にも共通して見られる「4つの性質(通有性)」と、抵当権独自の「順位の原則」があります。これを理解することが攻略の第一歩です。

担保物権に共通する4つの性質

1. 付従性(ふじゅうせい)

借金(被担保債権)が存在しなければ抵当権も成立しません。借金が全額返済されて消滅すれば、抵当権もそれに伴って自動的に消滅します。「借金が主、抵当権が従」の運命共同体です。

2. 随伴性(ずいはんせい)

債権者が借金を取り立てる権利(債権)を他人に譲渡した場合、抵当権も一緒にくっついて移動します。債権と担保を切り離すことは原則としてできません。

3. 不可分性(ふかぶんせい)

借金を「全額」返済するまでは、不動産全体に抵当権の効力が及びます。例えば3000万円の借金のうち2990万円を返済したとしても、残る10万円のために家全体が競売にかけられる可能性があります。

4. 物上代位性(ぶつじょうだいいせい)

目的物が火災等で滅失したり、売却されたりしてお金(保険金や売却代金)に姿を変えた場合、そのお金に対しても抵当権の効力を及ぼし、そこから優先的に回収することができます。

注意ポイント
【注意ポイント】物上代位は「払渡し前」の差押えが絶対条件!

物上代位を行使するためには、保険金や売却代金が設定者(債務者)に「払い渡される前」に、抵当権者自らが差し押さえる必要があります。一度設定者の手元にお金が渡ってしまうと、他の一般財産と混ざってしまい特定できなくなるからです。
※なお、他の一般債権者がすでに差し押さえている場合でも、設定者に払い渡される前であれば、抵当権者は物上代位をすることができます(超頻出)。

順位の原則(早い者勝ち!)

1つの不動産には、複数の抵当権を重ねて設定することができます(例:1番抵当権をA銀行、2番抵当権をB銀行)。

もし対象の不動産が競売にかけられた場合、配当は「抵当権設定の登記の順番」で行われます。つまり、売却代金はまず1番抵当権者が満額回収するまで充てられ、余った金額だけが2番抵当権者に配当されます。

3抵当権の効力はどこまで及ぶ?

抵当権が実行されて不動産が競売にかけられる際、「敷地内にあるあの設備や、家から得られる家賃は一緒に持っていかれてしまうのか?」という点が試験で問われます。

【重要ポイント】効力の及ぶ範囲の分類
分類 具体例と特徴 効力が及ぶか?
付加一体物
(ふかいったいぶつ)
増築部分、取り外せない雨戸や建具、庭の石垣や植木など、不動産と一体化して簡単には分離できないもの 及ぶ
(一緒に競売される)
従物
(じゅうぶつ)
独立した物だが、主物の使い勝手を良くするために付属しているもの。庭の石灯籠、取り外せる畳、エアコンなど。 原則として及ぶ
果実
(かじつ)
その家を他人に貸して得られる「家賃(法定果実)」など、不動産から生み出される収益のこと。 原則:及ばない
(通常通り家賃は受け取れる)
※ただし債務不履行後は及ぶ!

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注意ポイント
【注意ポイント】果実(家賃)への効力

抵当権は設定者が使用収益できる権利ですから、原則として家賃などの果実に効力は及びません。しかし、「債務不履行があった後(借金の返済が滞った後)」に生じた果実に対しては、例外的に抵当権の効力が及びます。この切り替わりのタイミングが試験で頻出です。

4【最重要】法定地上権の4要件

抵当権のテーマにおいて受験生が最もつまずきやすく、本試験で毎年のように出題されるのが「法定地上権」です。

日本の法律では「土地」と「建物」は別々の不動産として扱われます。もし同一人物が所有していた土地と建物のうち、土地だけに抵当権が設定され、競売にかけられたらどうなるでしょうか?土地は他人の手に渡り、建物の所有者は「他人の土地の上に、無権限で建物を建てている状態(不法占拠)」になってしまいます。
このままだと建物を強制的に取り壊さなければならず、社会経済的な損失が大きいため、一定の要件を満たす場合に限り、自動的に建物のための「地上権(土地を使う権利)」を発生させる制度です。


Aの建物

Aの土地
抵当権設定

競売

Aの建物

Bの土地
他人の土地に!?

建物を壊さなくていいように「法定地上権」が発生!
学習のコツ
【学習のコツ】成立するための4つの絶対条件

以下の4要件をすべて満たした時にのみ、法定地上権が成立します。特に①と②の「設定当時」の状況がカギになります。

  1. 抵当権設定当時に、土地の上に建物が存在すること。(登記の有無や未登記建物であるかは問いません)
  2. 抵当権設定当時に、土地と建物が同一の所有者であること。(設定後に別々の所有者になっていても、設定時に同じならOKです)
  3. 土地・建物のどちらか一方(または両方)に抵当権が設定されること。
  4. 競売の結果、土地と建物が別々の所有者になること。
注意ポイント
【注意ポイント】試験で狙われる「成立しない」2大パターン

① 更地への抵当権設定
抵当権設定時に建物がない(更地)状態であれば、法定地上権は絶対に成立しません。銀行は「更地としての高い価値」を評価してお金を貸しているため、後から建った建物を保護して土地の価値を落とすことは認められません。

② 共同抵当における建物の再築
土地と建物の「両方」に抵当権を設定(共同抵当)した後、建物が取り壊されて新しい建物が再築された場合、原則として新しい建物に法定地上権は成立しません。銀行が予定していた「土地+建物」の担保価値の計算が狂ってしまうのを防ぐためです。

5抵当権を消す制度と第三取得者

「相場より安いと思って不動産を買ったら、実は前の持ち主の抵当権がついたままだった」というケースがあります。
もし前の持ち主がローンを返せなくなれば、新しく買った家が競売にかけられ、所有権を失ってしまいます。このような不安定な立場にある買主(第三取得者)を保護し、抵当権を抹消させるための制度が2つ用意されています。

【重要ポイント】抵当権消滅請求 vs 代価弁済の比較
抵当権消滅請求 代価弁済
言い出しっぺ 買主(第三取得者) 銀行(抵当権者)
内容 「私が〇〇円払うから、抵当権を消して!」と第三取得者から提案する。 「〇〇円払ってくれたら、抵当権を消してあげるよ」と銀行から提案する。
銀行の承諾 必要
※提示額が不服なら銀行は2ヶ月以内に競売を申し立てる。
不要
※銀行自らの提案なので承諾云々の問題にならない。
債務者等の請求 主たる債務者・保証人・その承継人はどちらも利用不可
(全額返済する義務がある立場の人たちだから)

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学習のコツ
【学習のコツ】第三取得者の費用償還請求権

第三取得者が、買った家の屋根を修理したり(必要費)、価値を高めるリフォームをしたり(有益費)した後で、結局競売にかけられて家を失ってしまった場合、競売の代金から「最優先で」その費用の償還を受けることができます。抵当権者の取り分よりも優先される点が試験でよく狙われます。

6一括競売(更地に建物を建てた場合)

先ほどの法定地上権の項目で「更地に抵当権を設定した後に建物を建てた場合、法定地上権は成立しない」と説明しました。
このルールを適用すると、土地が競売にかけられた場合、新しい土地の所有者から「私の土地にある無権限の建物を壊せ!」と言われ、せっかく建てた建物が取り壊されてしまいます。

しかし、建物を壊すのは社会経済的にも不利益が大きいため、抵当権者は例外的に「土地と建物をセットで(一括して)競売にかける」ことが認められています。これを一括競売といいます。

注意ポイント
【注意ポイント】一括競売のひっかけ2大ポイント
  • 一括競売は「義務」ではない。
    土地と建物を一緒に競売してもいいし、土地だけを競売しても構いません。選択権は抵当権者にあります。
  • 優先弁済を受けられるのは「土地の代金」からのみ!
    抵当権者はもともと「更地(土地)」だけを担保にとっていたのであり、建物を担保に取っていたわけではありません。したがって、建物が売れた代金から優先して借金を回収することはできず、建物の代金については一般債権者と同じ扱いになります。

7根抵当権(ねていとうけん)のキホン

通常の抵当権は「1回の借金」に対して設定されるため、借金を完済すれば消滅します。
しかし、企業間の取引などで「毎月何度もお金を借りたり返したりする」場合、その都度抵当権を設定・抹消するのは非常に手間です。そこで、あらかじめ「いくらまでなら担保する」という上限の枠を決めておき、その枠内なら何度でも債権の発生と消滅を繰り返せるようにしたのが根抵当権です。

① 極度額(きょくどがく)

「この金額までは担保する」という上限枠のこと。後から関わる人が不測の損害を被らないよう、極度額は必ず登記が必要です。(※普通の抵当権の利息は「最後の2年分」しか優先弁済されませんが、根抵当権は極度額の範囲内なら何年分の利息でも担保されます)

② 元本確定(がんぽんかくてい)

取引が終了し、「最終的な借金の額が確定」すること。確定する「前」は、お金を全額返して残高がゼロになっても根抵当権は消滅せず(付従性がない)、債権を他人に譲渡しても根抵当権はついていきません(随伴性がない)。

注意ポイント
【注意ポイント】元本確定「前」の変更ルール(承諾の要否)

元本が確定する前なら、当事者の合意で根抵当権の内容を変更できます。ここで試験に出るのが「利害関係人の承諾」です。
「極度額の変更」だけは、枠が広がると後順位抵当権者の取り分が減ってしまうため、利害関係人の承諾が絶対に必要です。一方で、「債務者」や「担保する債権の範囲」の変更は、いくら変えても極度額という上限枠は変わらないため、後順位者の承諾は不要で自由に行えます。

8抵当権と賃借権の関係

抵当権が設定されている建物を借りて住んでいる賃借人は、もしその建物が競売にかけられた場合、新しい所有者(競落人)に対して「自分には借りて住む権利がある!」と対抗できるのでしょうか?宅建試験で頻出のテーマです。

重要ポイント
【重要ポイント】原則「対抗できない」が、6ヶ月の明渡猶予あり

結論から言うと、「抵当権設定の登記」と「賃借権の対抗要件(建物の引渡しなど)」のどちらが先かで決まります。
抵当権登記の「後」に入居した賃借人は、競落人に賃借権を対抗できず、原則として家を出ていかなければなりません。

<6ヶ月の建物の明渡し猶予>
しかし、競落された瞬間に「明日出ていけ」と言われるのはあまりに酷です。そのため、抵当権に対抗できない賃借人であっても、買受人(競落人)が買い受けた日から「6ヶ月間」は、建物の明渡しが猶予されます。ただし、買受人から「猶予期間中の家賃(賃料相当額)を1ヶ月分以上払え」と催告されたのに払わなかった場合は、この猶予期間を取り消されてしまいます。

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