1,000万 vs 60万、2週間 vs 1週間──「金額」と「日数」のすり替えを見破れば合格がグッと近づく!
1そもそもなぜお金を預けるの?
不動産の取引は数千万円単位になることが多く、もし宅建業者が倒産したり、契約違反をして逃げたりした場合、お客さんは泣き寝入りになってしまいます。
そこで、宅建業法では「宅建業を始めるなら、事前にお客さんを救済するためのお金を預けておきなさい」というルールを作りました。この預けるお金の仕組みには、大きく分けて2つのルートがあります。
法務局(供託所)に全額直接預ける
原則的なルートですが、非常に高額なお金(本店だけで1,000万円)を用意しなければならないため、開業のハードルが高くなります。
みんなでお金を出し合って協会に入る
宅建業者が集まって作った「保証協会」に加入するルート。少額の負担(本店で60万円)で済むため、全国の不動産屋の約9割以上がこちらのルートを利用しています。
【注意ポイント】保証協会への加入は「任意」
保証協会への加入はあくまで「任意」です。「宅建業を営む者は、必ず保証協会に加入しなければならない」という問題は×(誤り)です。営業保証金を直接預けてもOKだからです。ただし2つの制度の併用は不可であり、営業保証金を供託してかつ保証協会にも加入するということはできません。
【学習のコツ】2つの制度を「常に比較」して覚える
営業保証金と保証協会は、「金額」「預け先」「有価証券の可否」「還付の流れ」「補充の日数」「取戻しのルール」など、対応するポイントが多くあります。片方だけ覚えるのではなく、常に「もう片方ではどうか?」と比較しながら整理するのが最短ルートです。試験では両者をすり替えた引っかけが頻出するため、比較で学習すれば引っかけへの耐性がつきます。
【重要ポイント】供託の届出前は事業開始禁止
営業保証金を供託した場合でも、保証協会に加入して分担金を納付した場合でも、免許権者にその旨の届出をした後でなければ事業を開始してはなりません。「供託しただけ」「分担金を納付しただけ」では事業を始められない──この点は両制度に共通する大原則です。なお、免許を受けてから3ヶ月以内に届出をしない場合、免許権者は届出をすべき旨の催告をし、催告から1ヶ月以内に届出がなければ免許を取り消すことができます。
22つの制度の違い(金額・供託先)
「営業保証金」として法務局に預ける場合と、「保証協会」に入って協会にお金を納める場合で、負担する金額のケタが違います。この金額は確実に暗記してください。
| 営業保証金 | 保証協会(弁済業務保証金) | |
|---|---|---|
| 正式なお金の名称 | 営業保証金 | 弁済業務保証金分担金 (協会におさめるお金) |
| 主たる事務所(本店) | 1,000 万円 | 60 万円 |
| 従たる事務所(支店) ※1か所につき |
500 万円 | 30 万円 |
| どこに納めるか | 主たる事務所の最寄りの 供託所(法務局) |
保証協会 |
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【注意ポイント】新しく支店を出した時のルール
支店を新設した場合、その支店分の額(500万円 or 30万円)を追加で納めなければなりません。そのお金を納めた後でなければ、新しい支店で事業を開始することはできません。「営業開始から2週間以内に供託すればよい」等の引っかけに注意しましょう。保証協会の場合は、新たな事務所を設置した日から2週間以内に分担金を納付する必要があります。
【重要ポイント】保証協会が行う「弁済業務保証金」の供託
保証協会の社員(業者)が分担金を納付すると、保証協会はその納付を受けた日から1週間以内に、社員分の弁済業務保証金を法務局(供託所)に供託しなければなりません。つまり、業者→協会→法務局という流れでお金が移動します。業者が直接法務局に供託するのは「営業保証金制度」だけです。この「お金の流れの違い」は試験頻出です。
【重要ポイント】保証協会の「業務」を把握する
保証協会は弁済業務(お客さんへの還付)以外にも、以下の業務を行います。
- 苦情の解決:社員の取引に関する苦情について解決の申出があった場合、相当の期間内に解決する
- 研修の実施:社員である宅建業者やその従業者に対する研修
- 手付金等保管事業:宅建業者が受領する手付金等の保管事業(任意業務、国土交通大臣の承認が必要)
- 一般保証業務:社員の取引により生じた債権に関する一般保証業務(任意業務、国土交通大臣の承認が必要)
3お金は「現金」以外でもOK?(有価証券の評価)
1,000万円という大金を用意できない場合、「国債」などの有価証券(紙)で代用することができます。ただし、ここでも2つの制度で明確な違いがあります。
営業保証金の場合
有価証券も使用OK保証協会(分担金)の場合
有価証券は不可(現金のみ)有価証券の評価額(計算問題に注意!)
営業保証金として有価証券を預ける場合、額面金額の100%の価値として認められるとは限りません。以下の評価割合を暗記してください。
- ① 国債証券: 額面金額の 100%
- ② 地方債証券、政府保証債証券: 額面金額の 90%
- ③ その他の有価証券(社債など): 額面金額の 80%
(例)地方債1,000万円分を預けても、900万円分(90%)としてしか評価されないため、残り100万円は現金等で補う必要があります。
【注意ポイント】「分担金」と「弁済業務保証金」で有価証券の扱いが異なる
業者が保証協会に納める「分担金」は現金のみですが、保証協会が供託所に供託する「弁済業務保証金」は有価証券でもOKです。つまり「お金を出す段階」と「お金を預ける段階」で扱いが異なります。試験では「保証協会の社員は有価証券で分担金を納付できる」(×)や「弁済業務保証金は現金のみで供託しなければならない」(×)という引っかけが出ます。
4お客さんが損をした時(還付と補充)
宅建業者のミスでお客さんが損をした場合、お客さんは預けられているお金から被害額を取り戻すことができます。これを「還付(かんぷ)」と呼びます。
還付を受けられるのは「宅建業に関し取引をした者」ですが、ここから「宅建業者」は除外されます。
つまり、宅建業者同士の取引で損をしたとしても、プロ同士だから自分で解決しなさいということで、この制度からお金を取り戻すことはできません。試験で非常によく出ます。
【注意ポイント】保証協会の場合は「認証」が必要
営業保証金の場合は、お客さんが直接供託所(法務局)に対して還付請求を行います。一方、保証協会の場合は、お客さんがまず保証協会の「認証」を受けてから供託所に還付請求する流れになります。保証協会の「認証」が間に入る点が大きな違いです。試験では「保証協会の社員と取引した者は、保証協会に対して直接弁済を請求できる」(×:供託所に請求する)が頻出です。
還付されたらお金を「補充」する!【日数が重要】
お客さんにお金が支払われると、預けてある保証金が不足してしまいます。業者はこれを決められた日数以内に補充しなければ、業務停止や免許取消しになります。
| 営業保証金の場合 | 保証協会の場合 |
|---|---|
|
免許権者から「不足したよ」と通知を受けた日から 2週間 以内に、供託所に不足額を供託する。 その後、2週間 以内に免許権者に届出をする。 |
保証協会から「不足したよ」と通知を受けた日から 2週間 以内に、保証協会に「還付充当金」を納付する。 ※その後、保証協会が1週間以内に供託所に補充してくれます。 |
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【重要ポイント】補充しないとどうなる?
営業保証金の場合、通知から2週間以内に不足額を供託しないと、免許権者は業務停止処分を行うことができます。保証協会の場合、通知から2週間以内に還付充当金を納付しないと、保証協会はその社員の地位を失わせることができます(社員でなくなる)。社員の地位を失った業者は、さらに1週間以内に営業保証金を供託しなければ営業できなくなるため、結果的に二重のペナルティを受けることになります。
【重要ポイント】還付額の上限
保証協会の場合、お客さんが還付を受けられる上限額は、その業者が「営業保証金制度を利用していたならば供託すべきであった金額」です。つまり本店1,000万円+支店500万円×箇所数が上限です。実際に納付した分担金(60万円+30万円×箇所数)が上限ではないので注意しましょう。
5保証協会をやめた(クビになった)時の特則
分担金を払わなかったり、不正をして保証協会の社員としての地位を失った(協会を追い出された)場合、その業者はどうなるでしょうか?
「1週間 以内」に、自ら営業保証金を供託しなければならない!
※「2週間」ではありません。「1週間」という非常に短い期間で、本店1,000万・支店500万という大金を現金や有価証券で法務局に持っていかなければ、宅建業を続けることができなくなります。
【注意ポイント】日数の引っかけ総まとめ
この分野には「1週間」と「2週間」が混在しており、試験で頻繁にすり替えられます。整理すると、「2週間以内」=還付後の補充(営業保証金・保証協会とも)、支店新設時の分担金納付。「1週間以内」=協会を追い出された後の営業保証金の供託、保証協会が供託所に弁済業務保証金を供託する期限。この「1週間 vs 2週間」の使い分けは必ず暗記しましょう。
【重要ポイント】地位を失った後の分担金はどうなる?
保証協会の社員の地位を失った業者は、保証協会に対して弁済業務保証金分担金の返還を請求することができます。ただし、保証協会は返還に際して、その業者と取引した者で還付の権利を有する者に対して6ヶ月以上の期間を定めて公告を行い、権利の申出がないことを確認した後でなければ返還する必要はありません。
6事務所の移転と「取戻し」のルール
本店の移転(供託所の変更)
本店が移転すると、最寄りの供託所(法務局)も変わります。預けているお金をどうやって移動させるかが問題になります。
- 現金「のみ」で供託している場合:
元の供託所にお願いして、新しい供託所へお金を移送してもらうことができます(保管替えといいます)。 - 有価証券を使っている場合:
保管替えはできません。新しい供託所に新たに全額を供託(二重供託)してから、古い供託所から取り戻す手続きをします。
【注意ポイント】「保管替え」は現金のみ・同一法務局管轄外への移転時
保管替えは金銭のみで供託している場合に限り利用可能です。有価証券が1円でも混じっていれば保管替えは使えず、二重供託→取戻しの手続きが必要になります。また、同一の法務局の管轄内での移転であれば、そもそも最寄りの供託所が変わらないため保管替えは不要です。
預けたお金の「取戻し」と「公告」
廃業した時や、保証協会に入り直した時など、預けていた営業保証金を取り戻すことができます。しかし、すぐに返してくれるわけではありません。
原則:6ヶ月以上の「公告」が必要
お客さんが還付を受けるチャンスを守るため、「お金を返してほしい人がいたら名乗り出てください」と、6ヶ月以上の期間を定めて公告(官報等でお知らせ)しなければなりません。
例外:公告「不要」ですぐに取り戻せる場合
以下の場合は、誰も損をするおそれがないため、公告せずにすぐ取り戻せます。
- 新たに「保証協会」に加入したため、営業保証金が不要になったとき。
- 二重供託をして、古い供託所から取り戻すとき。
- 廃業等をしてから10年が経過したとき。
【学習のコツ】「お金の流れ」を図でイメージする
営業保証金と保証協会の学習では、「誰が → 誰に → いくらを → いつまでに」お金を渡すのかという「お金の流れ」を図でイメージするのが効果的です。特に保証協会の場合は、「業者→協会→法務局」「お客さん→(認証)→法務局」「法務局→お客さん」「協会→業者(分担金返還)」など複数の矢印が交差するため、フローチャートで整理すると理解が深まります。
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営業保証金 vs 保証協会 比較表
2つの制度の「金額」「供託先」「有価証券の可否」「取戻し」を一覧で完全横断比較。
保証協会の手続 解法フロー
「加入」「還付」「補充」までのお金の流れと、引っかけ頻出の「日数」を図解で整理。
保証金 ひっかけ対策集 10選
「還付の対象者」「2週間と1週間の違い」「有価証券の割合」など試験委員が好む罠を徹底解説。