区域の入れ子構造・13用途地域・53条許可・地区計画の届出──街づくりの全体像を一気にマスター!
1そもそも「都市計画法」って何?
もし、あなたが静かな住宅街にマイホームを建てた直後、隣の空き地に「24時間稼働する巨大な化学工場」が建ったらどう思いますか?騒音や悪臭で、とても住んでいられませんよね。
このような無秩序な開発を防ぎ、「住みよい街をつくるためのルール」を定めた法律が都市計画法です。
【学習のコツ】「マトリョーシカ(入れ子構造)」でイメージする
都市計画法は「マトリョーシカ(入れ子構造)」になっています。国が「ここを街にする」という大きな網をかけ、その中で徐々にルールを細かくしていくイメージです。「都市計画区域→区域区分→用途地域→地区計画」と、外側から内側に向かってルールが詳細になる構造を頭に入れると、全体像がスッキリ見えてきます。
2どこを街にする?(区域の指定)
日本全国すべての土地をキッチリ整備するのは、お金も労力もかかりすぎて不可能です。そこで、まずは「重点的に街づくりをする場所」を決めます。
一体の都市として総合的に整備・開発・保全する必要がある区域。街づくりの主役となる場所です。
原則:都道府県知事
例外:2つ以上の都府県にまたがる場合は国土交通大臣
都市計画区域「外」で、そのまま放置すると将来の街づくりに支障が出る場所(高速IC周辺など)。乱開発を防ぐために指定します。
都道府県知事(大臣が指定することはない)
【注意ポイント】準都市計画区域は都市計画区域の「外」
準都市計画区域は必ず「都市計画区域の外」に指定されます。都市計画区域内に重ねて指定されることはありません。また、都市計画区域が新たに指定され、既存の準都市計画区域と重なった場合、準都市計画区域は消滅します。
【重要ポイント】準都市計画区域で定められる都市計画
準都市計画区域内では、定められる都市計画の種類が限定されています。具体的には用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域、高度地区、景観地区、風致地区、緑地保全地域、伝統的建造物群保存地区の8つです。区域区分(線引き)や都市施設、市街地開発事業は定めることができません。
3街をどう分ける?(区域区分)
「都市計画区域」に指定された場所でも、すべてをビルや住宅で埋め尽くしては、自然がなくなってしまいます。そこで、無秩序な市街化を防止するために、区域内をさらに2つに線を引いて分けます(これを「線引き」または「区域区分」と呼びます)。
区域区分(線引き)
市街化区域
すでに市街地になっている区域や、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。
※必ず「用途地域」を定めます。
市街化調整区域
市街化を「抑制」すべき区域。家やお店を建てるのは原則禁止です。
※原則として「用途地域」は定めません。
【注意ポイント】区域区分は「義務」ではない
すべての都市計画区域で線引きが行われるわけではありません。線引きが行われていない区域を「非線引き区域(区域区分が定められていない都市計画区域)」と呼びます。ただし、指定都市等の区域を含む都市計画区域では、区域区分を必ず定めなければなりません。それ以外の都市計画区域では、定めることが「できる」(任意)とされています。
【重要ポイント】各区域における用途地域のルール
- 市街化区域:用途地域を必ず定める(義務)
- 市街化調整区域:用途地域は原則として定めない
- 非線引き区域:用途地域を定めることができる(任意)
- 準都市計画区域:用途地域を定めることができる(任意)
4どんな建物を建てる?(用途地域と地域地区)
「市街化区域」には必ず定められるのが用途地域(ようとちいき)です。「ここは静かな住宅街」「ここは賑やかな商業エリア」というように、建物の使い道を13種類に分けてルール化します。
| 分類 | 用途地域の種類(全13種) |
|---|---|
| 住居系 (8種類) |
第一種/第二種低層住居専用、田園住居、第一種/第二種中高層住居専用、第一種/第二種住居、準住居 |
| 商業系 (2種類) |
近隣商業、商業 |
| 工業系 (3種類) |
準工業、工業、工業専用 |
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【学習のコツ】「第一種」と「第二種」の違い
名称が似ていて混乱しやすいですが、「第一種」は環境保護を最優先(厳しい)、「第二種」は環境を守りつつ利便性も考慮(少し緩い)と覚えましょう。たとえば、第一種低層ではコンビニも建てられませんが、第二種低層なら小規模な店舗(150㎡以内)は建てられます。
【注意ポイント】「工業専用地域」だけは住宅が建てられない
13種類の用途地域のうち、住宅が一切建てられないのは「工業専用地域」だけです。「工業地域」では住宅を建てることができます。試験では「工業地域内では住宅を建築できない」という引っかけが出ますが、答えは×です。また、全13種類すべてで建築できる建物は「診療所」と「保育所」です。これも頻出知識です。
用途地域に「上乗せ」するルール(補助的地域地区)
街のニーズに合わせて、ベースとなる「用途地域」の上に、さらにピンポイントなルール(補助的地域地区)を重ね掛けすることがあります。
【重要ポイント】主な補助的地域地区
- 特別用途地区: 用途地域が指定されているエリアにのみ指定できる。(例:文教地区としてパチンコ店をさらに厳しく排除するなど)
- 特定用途制限地域: 用途地域が指定されていないエリア(非線引き区域等)に指定し、無秩序な建物を制限する。
- 高度地区: 建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区。用途地域内に定める。
- 高度利用地区: 容積率の最高・最低限度、建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度を定める地区。用途地域内に定める。
- 防火地域・準防火地域: 火災を防ぐための地域。用途地域の指定がない場所でも指定可能。
【注意ポイント】「高度地区」と「高度利用地区」を混同しない
名前が似ていますが内容がまったく異なります。「高度地区」は建物の高さを制限する地区で、「高度利用地区」は容積率・建ぺい率・建築面積を規制して土地の高度利用を図る地区です。試験ではこの2つのすり替えが頻出です。
5インフラ整備と建築制限(都市施設と53条許可)
街を機能させるためには、個別の建物だけでなく、公共のインフラ(道路や公園)や大規模な面整備が必要です。
道路、公園、下水道、学校などのインフラのこと。都市計画区域内には必ず定めます。
特に必要がある場合は、都市計画区域「外」にも定めることができます。(例:市をまたぐ長い道路など)
「土地区画整理事業」や「市街地再開発事業」など、一定のエリアをまとめてガラッと整備するビッグプロジェクトです。
街をつくるための事業なので、市街化調整区域(街にしない区域)には絶対に定めることができません。
【重要ポイント】「市街化区域」と「非線引き区域」に必ず定める都市施設
市街化区域と非線引き区域には、少なくとも「道路」「公園」「下水道」の3つの都市施設を必ず定めなければなりません。この3つは必須セットとして暗記しましょう。なお、住居系の用途地域には、さらに「義務教育施設(小・中学校)」も定めなければなりません。
【頻出】都市計画施設の区域内における建築制限(53条許可)
将来、新しい道路や公園(都市施設)を作る予定の場所に、鉄筋コンクリートの巨大なビルを建てられてしまうと、いざ工事を始めるときに壊すのが大変です。そこで、将来のインフラ予定地には厳しい建築制限がかかります。
原則:都道府県知事の許可が必要
都市計画施設の区域(道路予定地など)や、市街地開発事業の施行区域内で建築物を建築しようとする者は、あらかじめ都道府県知事等の許可を受けなければなりません。
許可が不要になる例外(試験によく出ます!)
- 通常の管理行為、軽易な行為(仮設建築物など)
- 非常災害のため必要な応急措置
- 階数が2以下で、かつ、地階(地下室)を有しない木造等の建築物の「改築・移転」
※「新築」や「増築」の場合は、木造2階建てであっても知事の許可が必要です。
【注意ポイント】「改築・移転」はOKだが「新築・増築」はNG
53条許可の例外は、「2階以下・地階なし・木造等」の建築物の「改築」と「移転」だけです。同じ規模の木造建築物でも、「新築」や「増築」であれば知事の許可が必要になります。「木造2階建てなら何でも許可不要」と思い込むと引っかかるので、行為の種類(新築・増築・改築・移転)まで正確に判断しましょう。
6【重要】ミニマムな街づくりルール(地区計画)
法律で決める大雑把なルールだけでなく、「私たちの町内は、家の壁をレンガ調に統一しよう」「生垣を作って緑を増やそう」といった、住民レベルのきめ細かな街づくりルールを定める制度があります。これを地区計画と呼びます。
地区計画はどこに定められる?
用途地域が定められているエリアであれば指定可能です。また、用途地域が定められていないエリアでも、一定の条件(人が多く集まる集落など)を満たせば指定できます。
地区計画(地区整備計画)が定められている区域内で、建物を建てたり土地の区画を変更したりする場合、厳しい手続きが必要です。
市町村長 に 届出 をしなければならない。
届出に関する重要ルール
- 宛先と時期: 「都道府県知事」ではなく「市町村長」。着手した「後」ではなく「着手する30日前まで」(事前)です。
- 変更の場合: 届け出た事項を変更する場合も、変更する行為に着手する30日前までに届出が必要です。
届出が【不要】になる例外(引っかけ注意)
- 通常の管理行為、軽易な行為
- 非常災害のため必要な応急措置
- 国または地方公共団体が行う行為(これらは届出をする必要はありません)
- 建築確認の有無は無関係!
「建築確認を要しない建築物だから地区計画の届出も不要である」は誤りです。建築基準法と都市計画法は別のルールなので、小規模な家でも届出は必要です。
【重要ポイント】届出に対する市町村長の対応
届出を受けた市町村長は、届出の内容が地区計画に適合しないと認めるときは、届出をした者に対して設計の変更その他の必要な措置をとるべきことを勧告することができます。あくまで「勧告」であり、「命令」や「許可の取消し」ではない点に注意してください。勧告に従わなくても罰則はありませんが、公表される場合があります。
7都市計画はどうやって決まる?(決定手続き)
「ここに新しい道路を作ろう」「ここを商業地域にしよう」といった都市計画は、一部の権力者が勝手に決めることはできません。住民の意見を聞きながら、厳格な手続きを経て決定されます。
住民の意見を反映させるため、必要があるときは
公聴会(意見を聞く場)を開催します。
作成した案を2週間、一般に公開(縦覧)します。
住民や利害関係人は、この期間内に意見書を提出できます。
専門家が集まる「審議会」で、案が妥当かどうかをチェックします。
※都道府県が決定する場合は、関係市町村の意見も聞きます。
都市計画は「告示」があった日から、その効力を生じます!
(※「決定した日」から効力が生じるわけではありません)
【注意ポイント】「誰が」都市計画を決定するか
都市計画の決定権者は、原則として都道府県または市町村です。区域区分(線引き)や都市施設のうち広域的なものは都道府県が決定し、地区計画や用途地域など身近なものは市町村が決定します。都道府県が都市計画を決定する場合には国土交通大臣と協議し、同意を得る必要があるものがあります(区域区分など)。市町村が決定する場合は都道府県知事に協議する必要があります。
【重要ポイント】都市計画の提案制度
土地の所有者やまちづくりNPO等は、都市計画の決定や変更を都道府県または市町村に対して「提案」することができます。提案するには、一定の面積(0.5ha以上)を有し、土地の所有者等の3分の2以上の同意を得ることが必要です。提案を受けた行政は、都市計画の決定・変更の必要性を判断し、採用しない場合はその旨を通知しなければなりません。
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